不登校の子どもさんは単に学校を休んでいるだけでなく、色々な症状や不本意な行動が伴って苦しんでいることが多いもの。その代表的な例を挙げながら、こんな傾向の子はどんなタイプの子なのか、これまでのカウンセリング経験をもとに説明いたします。
非行傾向
親御さんが最も対応に苦労されるが、この「不登校+非行」でしょう。非行問題が絡んでいる子のご相談は一年を通じてあり、春休みや夏休みなどの長期休み中盤から休み明けに最も多くなります。
両親も兄弟姉妹も至って真面目。子育てもいくら忙しくても一生懸命にやってきたはず。「なのになぜこの子だけが・・」。そう嘆いておられる親御さんは多いのではないでしょうか。
実は、子どもが非行に走るのは「子育ての良し悪し」だけが原因ではありません。最も大きく影響しているのはその子の「性格」や「環境」なのです。多くの非行の子をみると、ほとんどの子が「寂しがり屋」の「かまってちゃん」です。なのに、素直に甘えられない・困っていることを相談できない・・。
そんな子が思春期になってストレスを感じるようになると大変です。本来ならば、自力で解決できない時は友人や家族に相談するべきなのに、それができないのです。カウンセラーに相談するというのも論外でしょう。思春期に入るとどんどん溜まってくるストレス。モヤモヤした気持ちにどっぷりと浸かっているうち、やがてそのストレスを「見ないようにしよう」「何かで気を紛らわせよう」という、「現実逃避」の力が働いてきます。そのまま放置していると学校の遅刻・早退はもちろんのこと、深夜徘徊に万引きなど、状況はどんどん悪化してしまいます。中には少年鑑別所にお世話になる子もいるのです。
そんな非行に走る子をどう扱えば良いのか、「突き放してしまうともっと心配」、「より厳しくするだけではダメみたいだし」・・・。正攻法でうまくいかない時は視点をガラッと変えてみる必要があります。個別の対応策についてはカウンセリングを通じてアドバイスいたします。
※非行傾向の子の解決キーワードは、「親子の気軽な関係」「居場所づくり」「悪い子との関係を切る前に、望ましい子との関係を築く」「自信がもてる・自分を認めてもらえる力をつける」などです。
心身症傾向
不登校の中で一番多いのがこの相談です。ストレスを言葉にするのが難しく、溜まりに溜まったストレスが発散・解消しきれず、様々な「からだの症状」として現れます。腹痛・頭痛・下痢・「朝起きられない」などが主な症状で、病院で診てもらうと「過敏性腸症候群」「起立性調節障害(ストレス性)」といった難しい診断名を言い渡されることもあります。性格的には穏やかで人当たりの良い子、なかなかイヤと言えない子、会話にマイナス感情を込められない子が多いのが特徴です。
不登校とはいうものの家庭では落ちついている子が多く、事の重大さに気づきにくいのですが、心身症傾向の子がいったん身に着けた習慣や態度はなかなか変わりません。「ニコニコしている・穏やか」というのは再登校に向けての安心材料ではないのです。場合によっては親御さんが心を鬼にして対応する必要があることも。
当ラボではストレス性の心身症については多くの経験がございますが、カウンセリングが万能というわけではありません。身体の症状が出るだけに医療機関で詳しく調べてもらった上でご相談いただくと安心です(当ラボでは診断や検査はできません)。カウンセラー側も医学的に問題がないとわかっていれば、安心してアドバイスがお出しできます。
※心身症傾向の子の解決キーワードは、「自己主張」「話を詰める」「拒否権を与える」「悪口や弱音の促進」などです。
社会不安障害(=S.A.D.)(対人恐怖症)傾向
「人前であがってしまう」「相手の顔を見て話すことができない」「小声でしか話せない」「大勢の中にいると逃げ出したくなってしまう」「相手が自分のことをどう思っているか気になる」など、S.A.D.いわゆる「対人恐怖症」の子の特徴はだいたい共通しています。自分ひとりだったり、ペットの犬の前では平気なのに、こと相手が「人」となると必要以上に緊張感や恐怖心を感じてしまうのです。根っこには「相手から嫌われたくない・悪く思われたくない」という気持ちもあり、かといって、開き直ることもなかなかできず毎日苦しんでおられます。
また、対人恐怖症の子は「嘘」をつくのが苦手です。相手を傷つける嘘はお勧めできませんが、上手に世渡りをする上では多少の「方便」は必要になってきます。しかも、対人恐怖症の子は言葉だけでなく、表情や態度も偽ることができず「緊張感・恐怖感」が表れてしまい、相手にも悟られてしまいます。かといって、必死に「緊張しないようにしよう」「度胸をつける練習をしよう」と努力しようとすると、かえって裏目にでることもしばしばです。
※社会不安障害・対人恐怖症の子の解決キーワードは、「必要な嘘」「上手に断る練習」「曖昧表現を増やす」「手短な返事」「無理な解決策をとらない」などです。
いじめ(いじめられ)傾向
よく「いじる」と「いじめる」は紙一重と言われます。しかし、いじりやいじめが原因で不登校になった子の辞書には「いじる・いじられる」といった「不道徳な」「許されざる」言葉は載っていません。いじめに遭って不登校になる子の多くは「正義感」が強く「生真面目」で、「なんでも正面から受ける子」なんです。中には冗談を言われたり、ちょっとした嘘をつかれただけでも激高する子や、クラスメートが誰かにからかわれてるのも見過ごせない子も。しかし、彼らは何ら間違ってはいないのです。「いじる」であろうが「いじめる」であろうが、イヤなことを言ったり、した方が悪いのです。
親御さんの中には「もうちょっと融通きかせなさいよー」「そんなこと気にしないで」と子どもさんをなだめようとされる方がいますが、これは全くの逆効果。もちろん、社会性を身に付けるという意味では融通が利いたり、イヤなことも聞き流すことが必要になってくるでしょう。しかし、それは不登校問題が解決してから、慎重に進めていく方が得策でしょう。また、このパターンには学校の担任の先生もはまりやすいようです。家族(親)と連絡を密にとりながら連携していただくことをお勧めいたします。カウンセラーが学校と家族の間に入った方がうまくいくこともあります。
※いじめ傾向の子の解決キーワードは、「徹底した同調」「理解者さがし」「学校との連携」「悪口で盛り上がる」などです。
家庭内暴力傾向
親に暴言を浴びせたり暴力をふるったり、家庭内暴力の子がいる家庭では毎日がビクビクの連続です。対応する親御さんも疲れ果て、「なんとか頑張って逆境を乗り切ろう」という気力もどんどん失せてしまいます。
家庭内暴力の子は家では傍若無人にふるまうものの、学校では正反対ということがよくあります。クラス内でも目立たない大人しい子が非常に多いようです。口数が多くないため、クラスや部活動の嫌な役を回されたり、時にはいじられたりする子もいるようです。そうなると家に帰ってからが大変です。学校に登校している家庭内暴力の子は、登校時のストレスが大きく、そのストレスをうまく発散できず、家庭内で家族や物にあたっているということもよくあるのです。
一方、不登校状態になってしまっている家庭内暴力の子は、登校していた時に感じたストレスを発散できなかっただけでなく、親や友人など、身近に愚痴ったり相談する相手がいなかったり、たとえ相手がいても「不慣れさ」や「恥ずかしさ」から相談することができなかった子も多いようです。
基本的に家庭内暴力の子は、ストレスを自分一人が抱え込んでしまったり、発散することが苦手な子が多いように思われます。
こんな時に家庭内ではどんな対応ができるでしょうか?特に注意していただきたいのが「親子のテンポの違い」です。家庭内暴力の子は、どちらかというと「ゆっくり」で、一方の親(特に母親)は「テンポが速い」ことが多く、「普通」に会話をするだけでは子どもは言いたいことを言い切ることができません。ところが、「暴力で威圧」して話をすると、どんな話でも言いたい放題に。これを防ぐためには、荒れていない時でも会話のテンポに注意し、「会話の主導権を子どもに握らせる」ことです。言葉の選び方や具体的な話の進め方はカウンセリングで詳しくご説明いたします。
カウンセリングで対応のコツをつかんでいただければ、「それって○○っていうこと?」と、子どもの「表現力不足」も補ってやることもできます。理想的な形は子どもを落ち着かせるのではなく、うるさいぐらい・しつこいぐらいに喋れるようにしてあげることなのです。
※家庭内暴力の子の解決のキーワードは、「表現力」「会話のテンポの違い」「対等な立場」「穏やかな雰囲気」などです。